中学校3年生に薦めたい本100冊vol.5 8月

戦争という過去と向き合う・戦争文学

戦後70年を過ぎ、
戦争を体験した世代が
少なくなりました。
それは戦争の愚かさ、悲惨さを
語り伝えることが
困難になってきたことを意味します。
だからこそ読書が大切となってきます。
先人たちが伝えようとしたことを、
子どもたちに
しっかりと伝えていきたい。
そうした思いに応えてくれる、
戦争文学8冊です。

その1
「わんぱく天国」(佐藤さとる)

昭和10年代、
軍港として栄える横須賀市。
海の見える「按針塚」が
近所のわんぱくたちのあそび場。
めんこ、たこあげ、一銭飛行機、…。
夏休み、ついに少年たちは
「人が乗る飛行機をつくる」という
秘密の計画にとりかかる…。

その2
「リンゴの唄、僕らの出発」(佐江衆一)

その日、戦争が終わった。
夏休みの終わった学校では、
教科書が墨で塗りつぶされ、
先生たちは「民主主義」なるものを
口にし始める。
家では父が狼狽し、
母は錯乱する。
自分のまわりで
何かが突然変わってしまった
感覚を持つ「僕」…。

その3
「ひめゆりの塔」(石野径一郎)

カナの所属する特志看護師部隊
「ひめゆり部隊」は、
上陸を開始したアメリカ軍の
攻撃からのがれるため、
南風原野戦病院を放棄し、
移動を決定する。
介護活動をしながら南下する中、
負傷兵や引率教師、
そして仲間たちが次々に…。

その4
「対馬丸」(大城立裕)

昭和19年8月22日、
沖縄から本土に向かった
学童疎開船対馬丸は
米潜水艦の魚雷を受け、
深夜の海に沈んだ。
乗船者1661名、
うち学童800余名。
生きのこった学童は
わずか50余名…。

その5
「流れる星は生きている」(藤原てい)

昭和20年8月9日、ソ連参戦に伴い、
満州新京では真夜中から
脱出が始まった。
「私」は五歳の正広、二歳の正彦、
そして生まれたばかりの
赤子を抱いて、貨車に乗り込んだ。
そこから始まった、
一年以上に渡る言語に絶する行程…。

その6:
「原爆詩集」(峠三吉)

「ちちをかえせ
 ははをかえせ
 としよりをかえせ
 こどもをかえせ
 わたしをかえせ
 わたしにつながる
 にんげんをかえせ」(「序」)
本書は反戦反原発を
訴え続けながらも
若くして天に召された
詩人・峠三吉の詩集です。
原爆を直接体験した者でしか
表せない内容を、
詩人でしか成し得ない文章で
綴っています。

その7
「夏の花・心願の国」(原民喜)

1945年8月の広島。
突然「私」の頭上に
一撃が加えられ、
眼の前に暗闇がすべり墜ちた。
何が起きたのかわからぬまま
逃げ惑う「私」は、
目を覆うような惨状を目撃する。
やがて「私」は次兄とともに、
甥の変わり果てた姿に
遭遇する…。

その8:
「黒い雨」(井伏鱒二)

閑間重松は妻・姪とともに
広島で被爆する。
原爆投下直後の広島の混乱と惨状、
不確かな情報とパニック、
静かに襲い来る原爆症、
生活基盤の崩壊による
困窮した生活、
そして追い打ちをかけるような
結婚差別。
重松の日記は続く…。

1は戦争時代の生活、
2は戦争のもたらした戦後の混乱、
3は壮絶な沖縄戦、
4は知られざる疎開船の悲劇、
5は満州からの決死の引き揚げ、
6~8は広島原爆の悲惨さについて
書き表されたものです。

こうした作品を、
大人の一歩手前であり
人生でもっとも多感である
15歳の段階で
読んで欲しいと思うのです。
そして戦争を絶対に許さないという
確固たる意志を持って欲しいのです。

これらは中学生のみならず、
大人の読書にも
十分絶えうる8冊です。
この夏、大人のあなたも、
子どもたちとともに
戦争について読んで考えてみませんか。

(2020.6.30)

michel kwanによるPixabayからの画像

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA